「おっぱいの神さま」といわれ、乳の祈願のために乳型を年齢の数だけお供えして祈願するとよいという話が、神社拝殿内に掲げられている「潮神社由来記」にある。
布製の乳型が多数奉納されており、「おっぱいが出ますように」という願い事が名前とともに書き込まれているものもある。他に「安産」「子授け」「乳がん治癒」の祈願もある。「潮神社由来記」に書かれている年齢の数だけの小さい乳型を連ねたものは、他ではほとんど残っていないものである。
神社の前にある池の畔には、むかし大切にすれば水をもたらし、粗末に扱えば怒って日照りを起こす不思議な岩があったという。村の老女が「岩に乳を供えれば許される」と伝えたが、乳が出なかったため代わりに布で作ったおっぱいを納めたところ、雨が降って池に水が戻ったという話が伝わる。
創建時期は不詳。潮大明神という名前であるが、宮崎の「鸕戸神社と同體」で永享年代(1429〜1441)に再建されたという記録が『麻郡神社私考』*にある。祭神は鵜戸神宮と同じ鵜草葺不合尊(うがやふきあえずのみこと)。毎年4月29日には「おっぱい祭り」が開催されている。
池をまわり込んで行ったところに塞神社(さいじんじゃ)という男性の神さまを祀る小さな祠がある。金精さまがいくつか祀られていて、この場所では子授けと乳授けがセット**になっているらしい。
*福川義文:麻郡神社私考、熊本県神社庁球磨支部、2007年、p274
**金勢さまとセットになっている場所として、岩手県遠野市にある鵢崎(みさざき)や飯豊(いいどよ)の乳神さま、福島県鏡石町にある牛乳山乳石道祖神などがある。
湯前町公式サイトhttps://www.town.yunomae.lg.jp/kankou/kiji003927/index.html
湯前町商工会公式サイトhttps://yunomae-shoko.com/賽神社/
ブログ「神社と古事記」 https://www.buccyake-kojiki.com/archives/1025516246.html
写真:奥 起久子撮影(2017/05/02)