穴伏川(四十八瀬川)の上流の東谷には乳の祈願が伝わる滝が2つあり、その一つが文蔵(ぶんぞう)の滝である。『かつらぎ町今むかし話』によると、神宮皇后が朝鮮出兵から帰国し、出産後に九州から紀伊の国淡島についた。えびすの神から乳の出には葛城の南の谷に行くとよいとのお告げがあって、ぶんぞうの滝(えびすの滝、めおとの滝ともある)に来て乳の祈願をしたとある。
この滝は豊玉姫が山幸との間にできた子どもである鸕鷀草葺不合尊(うがやふきあえずのみこと)を産んだとき、乳房を置いていった2カ所のうちの片方とも記載されている。この書籍には、もう片方の乳は宮崎の鵜戸神宮に残したと記載されているが、鵜戸神宮公式サイトでは宮崎の方には両方があるそうだ。
鎌倉時代に文覚(もんがく)上人がここで荒行をしたといわれており、紀の国名水百選の一つに選ばれている勇壮な滝である。入り口には鳥居と祠が、奥に入っていくと注連縄が掛かっており、滝周辺には不動明王など石造物がある。
かつらぎ町民話等編集委員会編:かつらぎ町今むかし話、かつらぎ町、1997年、p190〜196
写真:我流天晴こと工藤氏(ブログ主宰者*)提供
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