広生寺(こうしょうじ)は遥か遠くに瀬戸内海を臨む丘の頂上にある。境内にお祀りされているお地蔵さまには女性の厄除けと乳授けのご利益があるといわれて参拝されたと『淡路巡礼』に記載がある。
乳授け以外に、子どもの疳(かん)の虫に効果があるというまじないを住職が施したり、田植えの済んだ頃には「けっけ」の祈祷護摩というお寺の行事で作られた灰を貰い受けて田畑に撒いて豊作を祈願したりすると書かれており、地元の人たちに身近なお寺だったようだ。
住職のお話では、祈願が盛んだったのは戦前だが、今もたまに乳の祈願に訪れる人がいるとのこと(2024年3月取材)。
お地蔵さまは以前は境内の東の端に西向きに立っていたが、崖が崩れて下に滑落するなどの災難を経て、現在は新しく作られた地蔵堂の中に、奉納された多くの仏像と一緒に東向きに安置されている。
武田信一:淡路巡礼、名著出版、1981年、p146 https://dl.ndl.go.jp/ja/pid/12222433/1/76
写真:奥 起久子撮影(2024/3/3)