淡路島の南端近く街並みを外れたところに建ち、本堂の屋根の鯱鉾の下の瓦に大きく薬師尊と彫られているのが印象的な寺院。ご本尊の薬師如来がむかしから周囲の人々に篤く信仰されてきたようだ。
昭和62年(1987)本堂改修時に、長押(なげし)の間から乳の祈願のための乳絵馬3枚、皮膚病治癒の祈願で奉納されたものと思われるナマズ図の絵馬9枚などが見つかった。
絵馬師が描いた近世のもので非常に保存状態がよく、淡路島の絵馬としては第1級の資料と永田氏が『祈りの絵・淡路島の絵馬』に記載。
乳絵馬は搾乳図で、1枚は裏面に天保6年(1835)とあるとのこと。乳を受ける容器は鼎(かなえ)の上に載った椀で、江戸時代の什器が描かれていると永田氏が細かく解説している。日本髪の女性の搾乳図は明治末のものという。
これらの絵馬は住職交代のため所在がわからなくなっている。
妙観寺は山号を金屋山という高野山真言宗の寺院で、淡路四十九薬師霊場の18番札所。本堂の石段には天保13年(1842)と彫られており、鐘楼を兼ねた立派な山門など古い建造物が残されている。
永田誠吾:祈りの絵・淡路島の絵馬、教育出版センター、2005年、p117(写真)、p125(文)、p378(データ)
写真:奥 起久子撮影(2024/3/3)、絵馬は永田誠吾氏提供