日本助産師会出版

乳信仰探訪

新潜戸は高さ40m、長さ200mの海の洞窟である
三箇所の出入り口が開口しており、遊覧船で入ることができる

新潜戸(しんくけど)は3か所の出入り口がある高さ40m、長さ200mの海の洞窟で、船で入ることが出来る。上から滴り落ちてくる水は「乳水」と呼ばれ、これに触れたり飲んだりすると乳がよく出るようになるとの伝承があることが、『出雲・石見の伝説』や資料のブログにある。『神と自然の景観論』にはこの水で炊いた粥を食べるとある。『日本産育習俗資料集成』にも乳の祈願のために訪れる場所として収載している(p356)。
支佐加比売命(きさかひめのみこと)が神埼の暗い窟に降り立って、猿田彦ノ命(さるたひこのみこと)(後の出雲の4大神の一人佐太大神)をこの窟で出産したという話が『出雲国風土記』にある。
潜戸は洞窟の意、加賀は洞窟の中に光が差し込んだ時に支佐加比売命が「あゝ、かかやけり」と述べたことに由来するとされる。昔は「神潜戸(かみくけど)」と呼ばれており、新潜戸の新は神から転じたものとのこと。旧潜戸というもう1箇所の洞窟と一緒に国指定名勝及び天然記念物に指定されており、また大山隠岐国立公園に含まれている。
洞窟へは遊覧船で行けるが、入り口が狭いので海が凪いでいないとすぐ欠航になる。船長は観光客に「洞窟の上から垂れてくるのがお乳の水です。この水でお粥を炊いて食べると乳の出がよくなると言われています。みなさん手を伸ばして上から落ちてくるお乳のお水を受けてください」と説明している。

酒井菫美、萩坂 登:出雲・石見の伝説 日本の伝説58、角川書店、1980年、p35
野本寛一:神と自然の景観論、講談社、2006年、p68〜69
ブログ「筑後守の航海日誌」http://tikugo.com/blog/shimane/kaka_kukedo_yuransen/
サイト「神々のふるさと山陰」 http://furusato.sanin.jp/p/mysterious/matsue/1/
写真:奥 起久子撮影(2024/9/10)

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