大雄寺(だいおうじ)の前、道路に面して立っている地蔵尊で、大正14年(1925)建立と彫られた石の祠である。大雄寺のものではなく町内の方々が管理しているもので、なんのお地蔵さまかなど謂れは不明だった。平成21年(2009)になって倉庫から「乳出地蔵尊」と書かれた版木が見つかり、正式名称が判明したと『伝えたいふるさと 城西思い出話』にある。この地蔵は乳のお地蔵さまだったのである。
大雄寺は法華宗の寺院で、小泉八雲の怪談「水飴を買う女」の舞台ということで有名。これは出産直前に亡くなった女性がお墓の中で子どもを産み、渡し賃の六文銭で買った水飴で育てられていた子どもがお墓の中から助け出されたという話である。
「乳出地蔵尊」はこの伝説に感銘を受けた地元の人たちが作成したのではないか、と資料にある。可能性はあると思うが、その情報は伝わっていない。ここ以外にも全国に広く伝わる「子育て幽霊」の中に、乳の祈願の伝承がある場所は少ないが存在するのである。京都府福知山市の永明寺、石川県輪島市の乳もらい地蔵、福岡の安国寺 飴買い幽霊の墓が知られている。
城西ふるさと楽会編:伝えたいふるさと城西思い出話、松江市城西公民館、2010年、p33
マップ「水と歴史の町 城西」
https://www.city.matsue.lg.jp/material/files/group/32/jousai_70752722.pdf
写真と資料:城西公民館提供