多伎町の小田川沿いの山中にある。巨岩の下に縦横奥ゆきがそれぞれ4x6x10mほどもある岩窟があり、中に和歌山権現のお社が鎮座している。祠の岩から滲み出る乳白色の水がお乳の神さまと信仰され、多くの人たちがその霊水を貰いにきたという話が『多岐町ふるさと事典』にある。
山陰中央新報の記事には、岩の割れ目から時折水が流れ落ち、それを胸に塗ると乳がよく出るという伝承があると紹介されている。現地のお社にある由緒版には「霊水湧出シテ産婦ノ祈祷に霊験アリ」とある。
和歌山権現の謂れは大変古く、『出雲國風土記』に「多支社(たきのやしろ)」として登場する。ご祭神は阿陀加夜努志多伎吉比賣命(あだかやぬしたききひめのみこと)で、近くの和歌山トンネル入り口には、ご祭神のレリーフがある。戦前の祭礼では、夜店や提灯行列、演劇一座の興行もあり大変賑わったという。
この場所へのアクセスだが、昭和39年(1964)の水害で参道や橋が崩壊し、それ以降参拝路はかなり荒廃しているので、現地には行かないよう勧められる(2024年7月)。
山陰中央新報 2014/09/25記事
多岐町ふるさと事典編集委員会:多岐町ふるさと事典、多岐町役場、2005年、p178
サイト「shrine-heritager」https://shrineheritager.com/wakasan-gongen/
ブログ「風姿」 https://fuushi.k-pj.info/pwk8/index.php?cmd=read&page=◎島根県出雲市多伎町小田「和歌山権現」(多伎社)
サイト「ストーンサークル」 https://stone-c.net/log/4123
写真提供:サイト「ストーンサークル」より(須田郡司氏提供)、石飛成夏氏(出雲市小田温泉)