日本助産師会出版

乳信仰探訪

手足の祈願で知られる千手観音堂には乳の祈願もあったという
堂内の千手観音の周囲はお花がたくさんあげられて綺麗に管理されている

蒜山高原の一角にある山乗(やまのり)渓谷に、赤い屋根の千手観音堂がある。手足の病気の祈願で知られる場所だが、他にも乳の出や乳痛が和らぐよう祈願し、観音堂に乳型を奉納する伝承があると『岡山の巨樹』に記載されている。『中和村史』『中和の文化財』には、祈願のための乳や手足の奉納物が堆く積まれているとある。
千手観音は戦国時代のものと言われており、十一面四十二臂像、高さ111cmで金泥が塗られている立派なもの。
現在お堂の中には奉納された木製の手足がたくさん積まれている。乳型は見当たらないが、現地を管理している自治会長(72歳)が子どもの頃は、木に2つの乳型を貼り付けたものがいくつも奉納されていたとのことである(2023年4月取材)。
以前はそばに五葉松の巨樹が聳えていた。樹高20m、目通り幹周4.0m、推定樹齢500年といわれ、市指定天然記念物であったが、残念なことに2017年に枯れて伐採されている。
この観音堂は戦国時代の武将山乗将監の子の千代松が勧請したとも、後醍醐天皇が勧請したとも言われている。昔は夏祭りに市が立ち、近郷のみならず鳥取方面からも人が集まって、まるで祇園の夜祭のように明け方まで多くの人で賑わい、とくにサザエの壺焼きが名物で今も貝殻が出土する、と資料に記載されている。

山陽新聞社:岡山の巨樹、1993年、p8〜9
中和村史編纂位委員会:中和村史、中和村、1975年、p458
中和村文化財保護委員会:中和の文化財、中和村、2003年、p31
写真:奥 起久子撮影(2023/4/7)
資料提供:真庭市教育委員会

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