宮本地区馬洗川北岸の山の麓にある八幡神社は、村社として地域の人たちに信仰されてきた大きな神社。参道の長い石段を登って、眼下に集落が見渡せる見晴らしのよい場所にある。
境内に玉依姫を祀る「乳神社」があるという話が『広島県民俗資料』にある。本殿の後側には多くの境内社があるが、近くに住む管理者の話によると、そこではなく合祀されて本殿に祀られているとのこと。『三次市史』には石を祀った「弁天さん」で、功徳・縁起(霊験)として「お乳がよく出る」と記載されている。
管理している方の話では、乳の祈願の話は関係者には知られており、拝殿正面脇の現在鹿の角が奉納されているあたりの外壁には、以前奉納された乳型がかかっていたとのことであるが残っていない(2024年7月取材)。
八幡神社の創建は戦国時代の終わり頃の天正年間(1573〜92)とのこと。品陀和気命(ホムダワケノミコト:応神天皇)ほか11座が祀られている。
『三次市史Ⅳ 民俗・民俗資料篇』三次市史編集委員会、2004、p422〜423
ひろしま・みんぞくの会:広島県民俗資料 第8集 心意生活2 民間信仰、ひろしま・みんぞくの会、1976、p277
写真:奥 起久子撮影(2024/7/7)