日本助産師会出版

乳信仰探訪

原爆で被災し、鉄筋コンクリート作りの不動尊堂
米国から返還された「Bell of Good Will」が寺院正面の壁にかけられている

西蓮寺は原爆ドームの近く、広島平和記念公園の道を挟んだ向かい側にある。鉄筋コンクリート3階建の近代的な建物で、注意して見ないと見過ごしてしまうかもしれない。道路に面した一角が不動尊堂である。
『広島史話伝説』と『広島県民俗資料6集』に、西蓮寺のお不動さんはお乳を授けたり、いらなくなった場合は止めたり、乳に関する願い事を自由に聞いてくれる、参拝時のお供物は白米1升と決まっており、極めて参詣者が多かったとある。いらなくなった場合は止める祈願というのは、乳預け祈願である。『広島県民俗資料8集』にはここが「乳不動」と呼ばれたと記載されている。
現在の不動尊堂には「原爆精霊供養 不動尊霊場」と書かれており、堂内には戦死者の位牌が納められている。
西蓮寺は山号を華䑓山という浄土宗の寺院。慶長10年(1605)法然上人によって創建という歴史を持つが、爆心地から80mという立地だったので原爆で壊滅し、戦後現在地に再建されたものである。
終戦直後に廃墟から掘り出され、米軍士官が米国に持ち帰って「被曝の鐘」として保存されていた鐘が、鈴木大拙氏の鑑定で西蓮寺のものと判明して24年後に返還され、「善意の鐘(Bell of Good Will)」として寺院建物正面に掛けられている。

都筑 要:広島史話伝説 第4輯 安芸備後の巻、郷土史研究会、1970、p264
ひろしま・みんぞくの会:広島県民俗資料 第6集 口承文芸3 伝説、1976、p374
ひろしま・みんぞくの会:広島県民俗資料 第8集 心意生活2 民間信仰、1976、p339
写真:奥 起久子撮影(2024/7/7)

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