県道30号線(小野田美東線)の道路脇にある。地面から1.8m位の場所に乳房のようなコブが2つある所から乳の木とよばれ、この「椋の乳房」に乳が出るよう甘酒をお供えして多くの人が参拝したという話が、『改訂吉部郷土史話』にある。
「参詣して乳を願い『椋の乳房』(椋の幹地面より一間位の所に人の乳房の形をなせるもの二つあり)に甘酒を供え、乳の御授を乞えば母乳出始めるといわれ参詣者が多くあった」。地元では吉部七不思議の一つと言われていたそうだ。
1991年環境庁データベースには、樹高15m、目通り幹周3.7m、樹齢200〜299年、樹種はクロガネモチで、乳の祈願の際には米のとぎ汁をかけると掲載されている。昔はそばに長谷(ながたに)の阿弥陀堂というお堂があったが廃寺となり、ご本尊の石の阿弥陀像は吉祥寺に移されているという。
近隣の方の話では、この木は二股に立ち上がっていて、昔は人がその部分をくぐり抜けることができたが、土地がかさあげされてコブの部分まで埋まってしまい、道路に広がっていた枝が切られて目立たなくなって残念とのこと。
楠町文化財保護審議会:わが町の文化財と文化遺産 第2集、楠町、1994、p54
吉部郷土史話編集委員会:改訂 吉部郷土史話、2001、p227
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写真:山本八重子氏提供(宇部市在住、2021/12/22撮影)