日本助産師会出版

乳信仰探訪

江良の馬頭観音・奥の院観音石

2022年に元の場所にお堂が再建された
馬頭観音以外の仏像もお祀りされている
注連縄が巻かれた奥の院の観音石:人物と比較するとかなり大きいことがわかる

江良地区の真砂山の馬頭観音と奥の院にある観音石は、昔から乳の出に霊験あらたかと言われて多くの参詣人がいた。『大津郡志』に、萩の東光寺にあるという「真砂山観世音略縁起」が記載されている。
それによると、百済の琳聖太子が船で渡ってきた時、砂浜に馬頭観音が現れたので真砂山の上に祀った。その情報を聞いた聖徳太子の指示で山には多くの寺院が立ち並び一大霊地であった。その後すっかり廃れていたが、元亀(1570〜1573年)年間に禅智上人が山の上に残っている馬頭観音を見つけ、奥の院の場所に茅舎を建てた。海上安全や疾病予防以外にとくに乳の出にご利益があり、奥の院にお参りして堂前の溝を掃除し、水を流して綺麗にすると乳がよく出るといわれたという。観音堂を管理している地元の方々は、お子さまの誕生時には乳の祈願に奥の院にお参りしたとのこと(2024年7月取材)。
奥の院には建物はなく、観音石と呼ばれる大きな石と周囲に幾つかの石像物が残っている。馬頭観音はここ70年余りの間江良の公会堂に祀られていたが、2022年に元の場所にお堂が再建された。
なお山口県には防府市に江良の乳安観音と呼ばれる乳の祈願の場所があるが、こことは別である。

長門市史編纂委員会:長門市史 民俗編、長門市、1979、p560、p715〜716
萩原新生:大津郡志 復刻版、マツノ書店、1986、p171
長門市郷土文化研究会:ながと歴史散歩、長門市郷土文化研究会、1996、p50
写真:奥 起久子撮影(2024/7/6)、長門市総合文化財センター提供
資料提供:長門市総合文化財センター

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神社奉納物(立体乳型絵馬)樹木(イチョウ)盃状穴仏像寺院仏像(堂)岩石乳神など樹木(イチョウ以外)その他現存せず奉納物(乳絵馬)奉納物(乳型)奉納物(その他)乳預け祈願摩崖仏

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