宇和島きっての海の景勝地赤松海岸に「赤松遊園地」があった。ここにノゾキ岩という大きな岩があり見どころの一つとして知られているが、この石を欠き取って乳が出るように祈願したという話が、昭和初期の習俗を記載した『日本産育習俗資料集成』と『愛媛県史』に記載されている。
この岩が乳の祈願の対象となった理由について記載されているものはないが、近くで見ると岩にはノジュールといわれる丸い乳のような形をした部分があり、祈願の理由はこれであろう。
またここには平家の落人が岩に隠れ、難をのがれようとしたが発見されて亡くなったという言い伝えがあって、小さい祠があるとも記載されている。現在側には竜王神社と書かれた白い鳥居と小さなお社があるが、平家の落人との関係は不明である。
「赤松遊園地」は昭和初期宇和島運輸が遊園地として整備したのが始まりで、以前は海水浴場として大変賑わっていたようだが現在廃業している。
恩賜財団母子愛育会:日本産育習俗資料集成、第一法規、1975、p360
愛媛県史編さん委員会:愛媛県史 民俗(下)、愛媛県、1984、p298
https://www.i-manabi.jp/system/regionals/regionals/ecode:2/50/view/6602
写真:奥 起久子撮影(2023/10/23)