円照寺本堂脇の地蔵堂にあり、乳地蔵(授乳地蔵)と呼ばれる。霊験あらたかで、とりわけ「乳をお授け下さい」と祈願をすると、必ず願いが叶ったとのことである。願ほどきの時には、2つの乳型をかたどったものを献納する風習があるとのこと。
最初は茅葺のお堂だったが、お参りする人が増えて来て円照寺境内に移されたものだそうだ。地蔵堂には乳の模型が沢山つるされていたという情報と、外壁にかかっている乳型の写真が『今治地方の伝説集』にある。
現在は堂内の地蔵の前に手作りの立体乳型絵馬が数個奉納されており、外のものはなくなっている。地蔵は、平安時代の康保年間(964~968)もしくは天慶年間(938~947)に、地中から掘り出された地蔵と言われている。この時五色のまぶしい光を発して、人々を驚かせたと書かれている。
地蔵堂の縁側には別の小さなお地蔵さんが置かれている。土中から掘り出された堂内の地蔵には胴のあたりに割れ目があるので、この代わりの地蔵におしろいや土を塗ってさしあげているのだそうだ。
円照寺は阿弥陀如来をご本尊とする臨済宗東福寺派の寺院で、ちょうど住宅地が終わって山地に移る境目の落ち着いた場所にある。
今治市誌編さん委員会:新今治市誌、今治市役所、1974、p931
大澤文夫:今治地方の伝説集、今治商工会議所、1992、p38〜40
今治商工会議所サイトhttps://www.imabaricci.or.jp/今治地方の伝説集/#ensyouzinonyuuzizousan
写真:奥 起久子撮影(2023/10/22)