西条市の郊外にある実報寺は、乳地蔵で有名。まず途中の道端に「安産・与乳・子授けの祈願所」という案内板が立っている。本堂の前には「みどりごを わきてめぐみの地蔵尊 乳房のもとめ かなわぬはなし」というご詠歌を記載した大きな板が柱に掲示されており、実報寺のご朱印には「乳地蔵尊」と書かれている。以前は奉納された乳型が地蔵堂の外にいくつもかかっていたという。
伊予六地蔵霊場の紹介サイトには、生まれた後はお乳をたくさん授けて下さり、成長後は強く豊かに生きることのできる心の栄養を与えて下さる乳地蔵とある。ご住職のお話では、伝承で書かれた資料はないのではないかとのこと。
ご本尊の地蔵菩薩は鎌倉時代に制作されたとされ、市指定有形文化財。高さ3mもある木造立像で、逗子の中に入っており、33年に一度開帳される。ご本尊は海岸に流れ着いたものを引き上げられたもので、昔は下の方には貝殻がついていた、あるいは秀吉に攻められた長曽我部勢が引き上げる時に持って行こうとしたが、船が転覆して流れ着いた、などの伝承があるそうだ。
実報寺の山号は聖帝山。四国霊場番外札所で、新四国曼荼羅第35番である。舒明天皇12年(640)に、天皇の道後温泉への湯治の帰りに勅願によって建立された。養老6年(722)には行基、弘仁6年(815)に空海も来山したといわれ、この付近の地名にもなっている古刹である。境内にあるもう一つの市指定文化財に一樹桜(エドヒガンの古木)がある。江戸時代立ち寄った俳人小林一茶がこの樹を見て、「遠山と見しは是也花一木」と言う句を詠んだと伝えられている。
六地蔵霊場会サイト http://www17.plala.or.jp/hagyuji/6jizou-btm.htm
写真:奥 起久子撮影(2023/10/22)