里山の棚田の上に聳えている大きなイチョウで、イチョウとそこからの眺めはなかなか素晴らしい。樹高26m*、目通り幹周13.3m*の巨木で、推定樹齢500年**と言われ町指定天然記念物。幹から無数に垂れ下がるチチを白い布で縛って願をかけると乳が出るようになると言われて、多くの参拝者が訪れていたという話が、神山町公式サイトにある。『樹木図説』には、乳房の病気の人がチチの先を紙で結んで願掛けをすると記載されている。
昔ここには銀杏山万福寺という小さな庵があったが、明治末に庵の仏像とイチョウが売りに出され、チチは切り取られて売却された。しかし売られた先で病人が出るなどの災いが起きたため、祟りと恐れられて送り返されたという逸話があるそうだ。その後、観音菩薩の霊験のあるご神木を守ろうと、村の人々が資金を出し合って買い戻したという。
シンボルの乳いちょうを多くの人に知ってもらおうと、平成8年(1996)から「いちょうまつり」が開催されている。
*1991年環境庁データベース **現地案内板(神山町教育委員会と神山町文化財保護審議会の連名)
神山町公式サイトhttps://www.town.kamiyama.lg.jp/enjoy/map/2015/12/chichi-icho.html
In Kamiyama(神山つなぐ公社サイト)https://www.in-kamiyama.jp/diary/9210/
高知営林局:四国老樹名木誌 上巻、1928、p80
上原敬二:樹木図説 第2巻イチョウ科、加島書店、1970、p177
写真:奥 起久子撮影(2023/4/24)