惠日寺(えにちじ)は標高370mの惠日寺山山頂付近にある大変古い寺院。境内にあるイチョウは、皮を煎じて飲むと乳の出がよくなるので「乳イチョウ」と呼ばれた、という記載が『香我美町史』にある。
それによると、聖武天皇の時代、山北の荒木谷にカシワの霊木があり、光り輝いて鳴り響いたため天皇が行基を遣わした。その木は大人10名が手を回すほど大きく、行基はそれを切って本尊の十一面観音を作り、お寺を建立して祀った。またその小枝を挿し木したところイチョウの木となって大きく育ったという。
この大木は台風で倒壊し、現在のイチョウはそのあとから芽生えた2代目という。根本から3本に分かれていて、他では見ない縮れて変わった形のチチがついており、樹の根本からはずらっと古い石仏が並んでいる。
惠日寺は山号を岩清水山、正式名を観足院恵日寺という、神亀2年(725)行基によって開基されたという。昔は7カ所の脇坊があって大変栄えたというが、明治時代に廃寺・再興という変遷を経て、現在は同じ香我美町の宝幢院(ほうどういん)が管理している。香南市指定文化財に指定され、国の重要文化財十一面観音立像・大日如来座像金剛界・同胎蔵界の3体が祀られている。近くには鍾乳洞で有名な龍河洞がある。
香我美町史編纂委員会:香我美町史 下巻、1993、p952
写真:奥 起久子撮影(2023/9/11)