お参りすると乳が出るというので、近隣からは「乳神さま」と呼ばれている神社で、周囲は住宅が散在する農村地帯。近くに住む女性の話によると、お賽銭が入っていることから今でもお参りに来る人がいるようだとのこと。
昔から西別府(にしのびゅう)地区の人たちが管理してきたもので、以前は10mほど離れた林の中にあったが、道路の側に移築したもの。年1回2月14日にお祭りを行っているという。お堂の中には、5個の石と、昭和37年(1962)建立との棟札がある。
島津氏討伐のため豊臣秀吉から命を受け京から豊後(大分)へ送られたきり消息がわからない軍師の夫を心配した女性が、老僧と一緒に豊後まで幼児と乳飲み子を抱えてきた。しかし老僧が先に亡くなり、夫とも巡り会えず、悲観した女性は子どもを道連れに死んでしまったので、それを悼んで建てた神社という。老僧が死ぬ前に、私を祀れば乳が出ると言い残し、実際そのご利益があったので、地域の人たちが乳の祈願に訪れるようになったという話が『宮崎の伝説』と川南町観光協会サイトにある。
比江島重考、竹崎有斐:宮崎の伝説 日本の伝説31、角川書店、1979、p61〜62
川南町観光協会サイト https://kawaminami-kanko.com/to-ki/
川南町観光協会制作動画 https://www.youtube.com/watch?v=FuTWsT7bWHw
写真:奥 起久子撮影(2023/8/26)