日本助産師会出版

乳信仰探訪

山里の農道脇に一本だけ立っているイチョウである
江戸時代の書籍に多くのコブがあって煎じて飲むと記載されている

山里のさほど広くない農道脇、畑のそばの丘の下にポツンと立っている雄木のイチョウ。樹高20m*、目通り幹周6m*、推定樹齢200~299年とあり*、町指定天然記念物。どこが立てたか記載がないが川下公民館という記載があるのでそこが立てたものかと思われる現地案内板によると、江戸時代に日田の国学者森春樹(1771~1834)が著した『玖珠郡志』の「名木」項に、たくさんコブをつけたイチョウについての記述があり、乳の出ない女性がこのコブを煎じて飲むと乳が出るようになる、と記載されていて、このイチョウのことではないかと書かれている。1991環境庁全国巨樹巨木データベースには、乳伝承ありと記載。
『玖珠郡志』の記載や乳イチョウと言う名称にもかかわらず、チチは小さいものが少しあるだけのようである。切り取られやすい環境なのでその可能性はあると思われるが、切り取られたような跡も見られないようだ。近くに全く寺院や神社がなく、その痕跡も残っていないのだが、どのような経緯でこの場所にイチョウが植えられたのであろうか?

森林ネットおおいた:大分の名樹、2019、p九重19
サイト「人里の巨木たち」http://www.hitozato-kyoboku.com/kawashimo-ichou.htm
*1991年環境庁データベースによる。
写真:奥 起久子撮影(2023/8/21)

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