かつらぎ町東谷にある乳の祈願が伝わる2つの滝のうちの1つに、不動の滝がある。『かつらぎ町今むかし話』に、東谷の西方寺の下には一の滝とも呼ばれるふどうの滝がある。目の病の効能のほか乳の出にもご利益があり、「この滝の水をいただくと、7日で乳が出ること間違いなしと多くの人がお参りした」とある。
『弘法水の事典』によると、不動前にある滝が不動の滝で弘法大師に関係する弘法水とのこと。案内板はなく、赤い鳥居が目印になる。
『紀伊続風土記』*には、葛城山中の十谷に高さ3間(10m)ほどの不動の滝があり、滝のそばの岩に十谷不動といって不動尊が彫られているとあるが、彫られた不動尊は確認されていない。
『かつらぎ町今むかし話』によると、近くの西方寺は宮崎の宇土からきた弘範という僧侶が、ここが宇土の景色と非常に似ていると薬師如来を奉じた寺院とのこと。宮崎の宇土というと、そこの鵜戸神宮には、豊玉姫が山幸彦との間にできた鵜葦草葦不合命(うがやふきあえずのみこと)を出産したとき、育児のために乳房を置いていったという伝承がある場所で、はるか離れた宮崎の宇土とこの場所との関係(近くの文蔵の滝にも豊玉姫が乳を置いていったという伝承がある)は興味深い。
*『紀伊続風土記 第1輯』仁井田好古 等編、1970年、p729(乳の話はない) https://dl.ndl.go.jp/pid/9573494/1/459
かつらぎ町民話等編集委員会編:かつらぎ町今むかし話、かつらぎ町、1997年、p190〜196
河野 忠:弘法水の事典、朝倉書店、2021年、p284
写真:我流天晴こと工藤氏(ブログ主宰者)提供*
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