畑が広がる酒梨集落の民家のそばにイチョウの木と地蔵堂がある。戦国時代末期の武将荻野丹後守夫婦にまつわる乳の祈願の話が伝わっている。
天正7年(1579)明智光秀の丹波攻めによって、丹波の赤鬼の異名を持つ荻野直正が城主だった黒井城は落城した。家老の荻野丹後守直国は奥方と赤ん坊を連れて落ち延び隠れ棲んだが、奥方の乳の出が減って赤ん坊が日毎に弱ってきた。城主の下屋敷があった地区にある酒梨地蔵に願をかけたところ、21日目の満願の日に「境内のイチョウの乳根を削り煎じて飲めば、乳の出がよくなる」とのお告げがあり、乳が出るようになった。これが「酒梨の子育て地蔵伝説」で『郷土の民話』に紹介されている。
今も「子育て地蔵尊」として授乳以外にも子どもの病気(水痘・麻疹・ムンプス・風邪など)にご利益があるとされお参りされているという。
別途紹介する鴨神社の大イチョウにも同じ逸話がある。
郷土の民話丹有地区編集委員会:郷土の民話. 丹有編、兵庫県学校厚生会、1973年、p54〜55
サイト「丹波のお話」 http://kirinosato.fc2web.com/DENSETUkasuga.html#sanase
写真:奥 起久子撮影(2022/10/17)
資料提供:丹波市教育委員会