鴨神社の一の鳥居の脇にあるイチョウの古木で、樹高14m*、目通り幹周5.9m*で市指定天然記念物。『兵庫県神社誌』に一の鳥居の脇のイチョウには乳が垂れていてこれを削って飲むと「即 乳たれり」との記載がある。痛みが激しく保存手術が行われているが、それを記録した現地の石碑には「古く平安の昔から乳の木として近郷在住の住民から崇敬されてきた」と彫られている。
こことさほど遠くない酒梨(さなせ)には、天正7年(1579)明智光秀の丹波攻めで落城した黒井城の家老荻野丹後守夫婦が乳の出を祈願したという「酒梨の銀杏伝説」があり、別途記載している。この際の夢のお告げは、酒梨の銀杏は梶原の大銀杏(鴨神社のイチョウのこと)とは兄弟なので、乳根を削って煎じて飲めば乳の出がよくなるというものだったという「梶原の大銀杏伝説」が兵庫県立歴史博物館ネットミュージアムに記載されている。ちなみに鴨神社も丹波攻めの際に明智光秀の軍勢により焼き払われている。
鴨神社は室町時代に神野神社(かものじんじゃ)として社殿が建立されたという古い神社で、田圃の中に浮かぶように社叢がある。祭神は京都の上賀茂神社と同じ鴨別雷神(かもわけいかずちのみこと)。イチョウのある一の鳥居は神社の近くではなく、神社前の道を東に200mほど行ったところにある四つ辻にある。
*環境庁巨樹データベース2000年フォローアップ調査
兵庫県神職会:兵庫県神社誌 上巻、兵庫県神職会、1937年、p888
兵庫県立歴史博物館ネットミュージアム:ひょうご伝説紀行
https://rekihaku.pref.hyogo.lg.jp/wp-content/uploads/2021/02/012.pdf
サイト「丹波の自然」 http://kirinosato.fc2web.com/tanbaSIZEN01-tennenkinen.htm
写真:奥 起久子撮影(2022/10/17)