乳信仰探訪

常瀧寺の大イチョウ

西日本で最大のイチョウといわれる
横に出た枝からも多数のチチが垂れ、地面に達したところから新しく幹が立ち上がっている
尾根に近いところにあるので、向こうの山が見下ろせる

麓にある常瀧寺(じょうりゅうじ)から約1km、40分ほど山を上った所にある西日本で最大といわれるイチョウ。樹高30m*、目通り幹周10.0m*、樹齢伝承1300年**といわれ、県指定天然記念物。横に出た大枝からも多数のチチが垂れ、地面に達したところから新しく幹が立ち上がって、1本の樹という言葉からは想像できないような姿をしている。
『兵庫県史蹟名勝天然記念物調査報告』に「乳状瘤多キ為メ乳汁ノ出ヌ婦人ノ祈願ノ為メ参拝スルモノオ頗ル多シ」とある。
「乳の木さん」と呼ばれて、チチの皮を服用すると乳の出がよくなるといわれて信仰の対象であったこと、大正時代には登山道に沿って1町(約100m)毎にお地蔵さまが祀られ多くの人が参詣したこと、徳島大の研究者がDNAを調べ神奈川県鶴岡八幡宮のイチョウと同一個体ではないかと報告されていることが、常瀧寺住職の記した現地案内書類にある。
『郷土の民話 丹有編』には「乳の木」と呼ばれ乳の出のために皮を削って飲んだという民話がある。実際木には明らかに削り取られた痕と、そこからまた新たな乳柱が垂れ下がっている箇所がいくつもある。現在「大名草の乳の木さんを守る会」が保護活動を行なっている。
常瀧寺は養老年間(717〜724)に法道仙人が開山、その時このイチョウをお手植したという伝承がある。七堂伽藍を備えた山岳修験の古刹であったが、天正5年(1577)に明智光秀の丹波攻めの際焼き払われ(『丹波志』)、この場所にはイチョウのみが残る。常瀧寺は江戸時代に山麓に再建されている。
*1991年環境庁データベース **開山時に植えたという伝承からとのこと

兵庫縣:兵庫縣史蹟名勝天然記念物調査報告 4輯、兵庫縣、1927年
郷土の民話丹有地区編集委員会:郷土の民話. 丹有編、兵庫県学校厚生会、1973年、p93〜94
ひょうごの民話再編復刻編集委員会/兵庫県学校厚生会:ひょうごの民話、2012年、p338〜339
丹波市観光協会サイト https://www.tambacity-kankou.jp/spot/spot-15714/
ブログ「with photograph」 https://withphotograph.com/?p=5381
サイト「丹波の自然」http://kirinosato.fc2web.com/tanbaSIZEN01-tennenkinen.htm
写真:奥 起久子撮影(2022/10/17)

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