出雲市郊外にある御井(みい)神社に、日本で一番古い井戸と伝えられる3つの井戸がある。『島根縣口碑傳説集』には、3つとは「生井(いくい)」「福井(さくい)」「綱井(つながい)」で、そのうちの「福井」が乳水であること、「生井は妊婦の平産を守り給ひ、福井は産婦に乳を與へ、且産婦生児の健康を守り、綱井は母子の健康を綱の長さの如く守り給ふと言い伝え、參拝するものが多い。」とある。今も綺麗な水が湧いているという。
御井神社は大国主命の神話に登場する八上比売(やかみひめ)とその子である木俣神(このまたのかみ)にまつわる伝承のある古い神社で、木俣神のうぶ湯に使われたことから、安産・長寿の神として信仰されている。
現在の神社の公式サイトでは、「生井」は生気ある神:子安、病気平癒を司り、「福井」栄久井で栄える井戸:母子の発展、家運隆昌を司る、「綱長井」つるべの綱の長い井戸:母子の長寿、家内安全を司るとなっていて、乳に関する具体的な情報はなくなっている。
正井儀之丞:島根縣口碑傳説集、島根縣教育会、1927年、p15〜16
御井神社公式サイト https://mii-jinja.jp/3ido.php
写真提供:河野 忠氏(立正大学)