『日本産育習俗資料集成』に、邑智郡川下村の竜源寺(ママ)の「田の中の地蔵尊」に乳の祈願をしたという記載がある。田の中の地蔵尊はご本尊の阿弥陀如来のこと。
『川本町誌』によると、延宝7年(1679)山崩れでお寺が崩壊、本尊の阿弥陀如来は田んぼに落ちたが石の上に立って無事だった。以降その田んぼは仏田と呼ばれ、糞尿の肥料を施さない米を栽培してお寺に奉納した。この米でお粥を炊いて食べると乳が出るとのことで、それを求めて多くの人が訪れたという。阿弥陀如来は5尺余(150cm超え)の木造立像で、本尊として移転したお寺に祀られ、「乳守仏」として崇められたという。
龍源寺は山号を三嶋山という臨済宗の寺院。応安元年(1368)この地の豪族小笠原氏によって創建され、山崩れの翌年少し離れた現在地に再建された。ここは石見銀山に近いため江戸時代には天領で、寺領6石だったという。鐘楼を兼ねた珍しい山門を持ち、赤茶色の石州瓦を乗せた古い建築様式の寺院。境内の小池にはモリアオガエルが生息している。
川本町誌編纂委員会編:川本町誌 歴史編、川本町教育委員会、1977年、p1190
写真:奥 起久子撮影(2024/7/8)
情報提供:龍源寺杉山住職