隠岐の島の最高峰である標高400mの大満寺山、その山頂近くの鬱蒼とした森の中にスギの巨木がある。スギには珍しい乳房状の下垂根が沢山垂れた異様な形状をしている。主幹は地上4~8mのところで15本もの数に分岐し、分岐している部分から更に大小24個の乳房状の根が垂れ下がっている。その形から母乳の神として崇拝されたと『隠岐の文化財』に、母乳の神として崇拝と隠岐島木材業製材業協同組合サイトにある。
樹高38m、目通り幹周11m、樹齢800年といわれて、県指定天然記念物。ご神体の岩倉さん=岩倉神社として祀られ、毎年4月23日に供え物を運んで祭礼を行っている(『布施村史』)。
大満寺山は火山活動があった場所で、このスギは溶岩流の上に生育しているとのこと。しかし根の下に嵌り込んでいる石の中には模様が彫られているように見えるものがあり、石造物もあるのかもしれない。
この辺り一帯は岩倉と呼ばれているが、磐座(いわくら)という神聖な場所を意味する用語に由来したものか。この場所から100mほど下った場所に廃寺跡があり、腰掛け岩という巨岩があって刀が埋められているという伝承があり、修験道とも関係した可能性があるとの記載が『布施村史』にある。
橋詰隼人ほか、山陰(鳥取・島根)巨樹・名木めぐり、牧野出版、1989年、p212〜213
隠岐島前教育委員会/隠岐島後教育委員会:隠岐の文化財 第2号、1985年、p13
布施村史編さん委員会:布施村史、1986年、p283、p446
ウッドヒル隠岐(隠岐島木材業製材業協同組合)サイト https://oki-woodhill.com/kyoboku/chichisugi/
写真:楯 亜希子撮影(助産師、IBCLC、東京都在住)
資料提供:隠岐の島町立図書館