茅部神社の境内社である足王神社は名前のように手足の守護神として知られており、春秋の祭日には近郊のみならず山陰地方からも多数の参拝者があるという。お堂の床下と外壁には木製の手足が奉納されているが、それと一緒に多くの乳型絵馬が残っている。四角の木の板に2個の木製乳型が取り付けられたもの。
神社関係者からの情報によると、乳の祈願に関する情報は伝わっておらず、また記載された資料もないようだが、乳型奉納物はここで乳の祈願が行われていたことを物語っている。
手足のご利益で有名な福井県若狭町の三方石観世音に無数に奉納された木造奉納物の中にも、手足以外に乳型絵馬が含まれている。また現在手足のみで乳型は残っていないが、岡山県真庭市の山乗千手観音堂にも同じ伝承があることから、この場所以外にも手足と乳がセットになっていた場所はあるものと思われる。
茅部神社は建部、茅部、布施郷の大社で、祭神は天照大神、御年神。延宝5年(1672)に建立され、本堂から800mのところにある石の大鳥居は安政7年(1860)から3年かけて作られたという巨大なもの。ここから本堂までの長い参道の桜並木も美しい。
写真:奥 起久子撮影(2023/4/7)
情報提供:入澤喜一氏(茅部神社宮司)