加賀美地区に今は珍しい茅葺き屋根の、いかにも山寺という感じの八塔寺がある。この境内裏にある首なし地蔵には、乳の出をよくするご利益があると言われて祈願されたという情報が、備前市公式サイト*をはじめいくつかのサイトにある。
境内の裏には何体もの石仏が立っているが、一番前の高い台座に座っているのが首なし地蔵。安永3年(1774)と彫られている。取れた首の代わりに丸い石が載っており、傍に柄杓が3つも置かれている。
隣の恵日山高顕寺 内海誠仁住職によると、以前はそばの池の湧水量が今よりも多く、それを柄杓で掬ってざぶざぶかけると乳が出ると言われていた。戦後しばらくまでは(昭和30年代くらいとか)よくお参りの人が来ていたという。
八塔寺ではなく高顕寺の方の山門についている8つの乳型金具(乳鋲という)を撫でても乳のご利益があるといわれ、こちらに来た人たちに撫でられたらしい乳鋲はピカピカになっている(2024年10月取材)。
八塔寺は山号を照鏡山といい、神亀5年(728)弓削道鏡が開基、本尊の十一面観音像は行基が安置したといわれている大変古くからの寺院だが、明治時代より無住。この地域はかっては「西の高野山」といわれ、盛時には72もの僧坊や十三重塔があった山岳仏教の聖地だったそうだ。現在は13軒の民家が残っており、昭和49年(1974)には加賀美地区全体が岡山県で初めての「ふるさと村」に指定され日本の原風景を紹介する活動を行っている。
備前市公式サイト https://www.city.bizen.okayama.jp/site/bizen/703.html
岡山観光サイト https://www.okayama-kanko.jp/spot/11046
サイト「Project Y’s」http://ybok.jp/old-content/profile/moles/projectys1.html
写真:奥 起久子撮影(2024/10/12)
情報提供:内海誠仁氏(高顕寺住職)