亜字川沿いの県道24号線(府中上下線)の道路脇に石の乳地蔵がある。この地蔵の側の湧き水をもらってきてお粥を炊いて食べると乳が出るという話が、『上下町史』にある。
地元の人の話によると、この湧き水は大雨や台風などの災害時にも濁らないこと、水は飲むだけでなく病変部に塗って治癒を祈願したこと、以前は多くの人が参拝したとのことである。以上は民俗伝承の会が平成19年(2007)に聞き取り調査を行った時の話として、教育委員会から情報提供を受けた。水量は減っているが、現在も少量の水が流れ出ているとのこと。
斗升町から水永町にかけては、八十八ヶ所地蔵として知られる四国八十八ヶ所巡りの代わりの石仏(弘法大師像)が辻堂や路傍に4箇所に分かれて祀られていた。以前はこの乳地蔵の隣に88体石仏のうち六十六番から八十八番までの23体が並んで立っていたが、六十五番までがある斗升町の方にまとめようとのことで移転してしまい、今は乳地蔵だけがポツンと立っている。
上下町教育委員会ほか:上下町史、上下町、1991、p695、p697
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写真:河野 忠先生(天正大学)提供
情報と資料提供:広島県府中市教育委員会