安浦三津口湾の海に向かって突出した大岩の上に神功皇后をお祀りした小祠がある。その皇后岩からさらに20mほど先の海中に岩石だけの小島があり、朱塗りの鳥居と稚児明神の祠が立っている。ここに祈願すると乳が出るという話が冊子『安浦町町勢要覧』に紹介され、『安浦町史』には2つの伝承が記載されている。
一つは山姥の話で、山姥が「幼子を育てる飲み乳を賜え」と日夜祈願したところ、霊験あらたかで乳が得られたという。2つ目は源 頼政の奥方「あやめの前」にまつわる伝承で、源 頼政は治承4年(1180)の以仁王の乱で挙兵したが、平 清盛の大軍に攻められて亡くなってしまった。「あやめの前」は乳飲み子だった種若丸を連れて舟で落ちのびたが、途中で乳が出なくなってしまった。乳母がこの場所のことを聞いて祈願したところ回復したことから、以後乳の守り神・稚児の明神と称され、子どもを持つ女性が多く参詣するようになったという。
毎年4月22日には、稚児明神祭として神事と餅まきが行われている。小島であるが、干潮時には歩いて行くことが出来るようだ。
三津口港は昔から海上交通の要衝で、沿岸を通る船が仮泊した。神功皇后が新羅に出兵のときもここに寄港して休んだと伝えられている。
安浦町史編さん委員会:安浦町史 地誌・民俗編、安浦町、2000、p306、p750〜751
川尻町誌編さん委員会/呉市史編さん委員会:川尻町誌民俗編、2005、p281
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資料と写真:安浦町まちづくり協議会提供