乳信仰探訪

原江寺の影向水

正面参道の向かって左脇に乳の祈願の話が伝わる井戸が現存する
周囲の溝を浚えると乳が出たとのこと。飲料水としてはもう使用されていない

海に近い櫛ヶ浜駅からすぐの原江寺がある場所には、むかし吸江庵と言われる寺院があった。江戸時代に書かれた『防長風土注進案』に、久米村の洞庭山吸江庵のご本尊は聖観音で、お告げにより井戸から見つかったもの。この井戸水を影向水(ようごうすい)と呼び、溢れた水が流れる溝をさらうと乳が出ることが、「今に彼 餘水の流るゝ溝を浚い乳の足りぬ婦人忽ち満乳すと言い傳ふ」と記載されている。
住職の話によると、この井戸水に乳の祈願が行われていたことは寺院に伝わっており、近隣の人でも高齢者は知っているのではないか。昔は寺院の近くまで海が来ており、周辺は漁師町だった。漁師の家の井戸水は塩分が多いが寺院の井戸水はそうではなかったことも、飲みやすくありがたいということにつながったのではないか。第二次世界大戦後すぐくらいまでは、この井戸水を求めてくる人がいたとのこと。井戸は飲料水としてはもう使われていないが、寺院の前の石段の下に現存する(2024年7月)。
原江寺は山号を洞庭山という曹洞宗の寺院。天文15年(1546)に、近くにあった原始院の二世繁翁宗茂大和尚を開山とし、同院の末院・洞庭山吸江庵として開創された。明治4年(1871) 原始院と合併して原江寺となる。山号の由来は、周辺に松林が生い茂っているここ徳山湾の海の風景が、中国の湖南省にある洞庭湖に似ているからという。

松村 久:防長風土注進案8巻、マツノ書店、1983、p90
https://dl.ndl.go.jp/pid/9575393/1/55
写真:有馬嗣朗氏(原江寺住職)提供

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