周囲を樹木に囲まれた三光寺の境内を奥に進むと、落差4mほどの滝がある。そばの大きな岩壁に彫られているのが乳房観音で、磨崖仏である。滝には水を鎮めるための不動明王がお祀りされていて「不動の滝」と表示されているが、言い伝えから「乳観音の滝」とも呼ばれる。
文政3年(1820)に滝つぼから霊仏が現れ、ここに参拝して滝つぼを清掃し柳を植えると乳がよく出るようになると告げたという。そのことが「…三藏院瀧之観世音霊験は、婦人乳汁の乏き時は此観世音へ祈念し、瀧壺酒掃し柳を植る宿願して其霊験御座候事世の人知る所にて是を乳観音とも申伝候…」と『防長風土注進案』に書かれている。
現地の礼拝の手順についての説明板には、お礼参りには乳型を奉納するよう記載されている。住職の話によると、以前は滝の周囲に網が張られて、その網や周囲の樹木に多数の乳型が結び付けられていたそうだが、現在何も残っていない(2024年4月取材)。寺院の公式サイトは、乳房観音のご利益は子宝・安産・子育て・婦人病に霊験あり、となっている。
『防長風土注進案』に記載のある三藏院は江戸時代後期に滝の増水で流れてしまい、昭和になって再建されて三光寺となった。ご本尊は釈迦如来で、百余体の諸仏、三十余柱の諸神が祀られている。滝の水を引いた池には弁才天が祀られ、周南七福神霊場の札所でもある*。
*新宮山三光寺公式サイト https://sankouji.or.jp/
松村 久(山口県文書館編修):防長風土注進案 第7巻復刻版、マツノ書店、1983、p392
https://dl.ndl.go.jp/pid/9575392/1/206
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写真:奥 起久子撮影(2024/4/21)