岡田屋は古くからの地名。宇部市の郊外の国道190号線から少し外れて林の方に入って行った場所にある。竹林の中に赤い涎掛けをかけた大きな石の地蔵立像が忽然と現れる。「岡田屋の霊泉地蔵は享保13年(1728)と言う縁起を持ち、乳の出に霊験があるので詣でる人が多い」と『宇部市史』にある。
比較的保存状態がよいので、昔はお堂の中に祀られていたのかもしれないが、今は小さい屋根があるだけで吹き曝し。足元には小さい礼拝用祠と石柱の一部のようなものが少しある以外古そうな石造物は周囲に見当たらない。
『郷土探訪』によると、地蔵は150年ほど前にここに移されたものという。「見返り地蔵」と呼ばれ、それはお参りして帰る際にもう一度振り返ってみるほどにきれいというのが由来とのこと。また鷺ノ久保霊泉の近くで「霊泉地蔵」とも呼ばれるとも書かれており、なるほど地藏の場所の手前には蓋がかけられているが霊泉も現存し、綺麗な水が流れている。
教育委員会からは「地元の郷土史家も住民の方も、この場所の乳信仰についてご存じありませんでした」と情報提供あり(2024年4月)。
宇部市史編纂委員会:宇部市史 自然環境・民俗方言編、宇部市史編纂委員会、1963、p417
原郷土史研究会:郷土探訪 総括編、2014
写真:奥 起久子撮影(2024/4/21)
情報提供:宇部市教育委員会