海に面した70世帯ほどの牛川集落にある古くからの寺院で、ご本尊の木造延命地蔵菩薩立像は市指定有形文化財。安産・授乳のご利益があるといわれたという話が、宇和島市公式サイトにある。『伊予吉田郷土史話集』には、「乳ヲ授ケ給フ霊験アリトテ遠近ノ渇仰最厚ク香華絶ユルコトナシ」と記載されていたこと、堂内の柱にぬいぐるみのおっぱいが下げられているという記載がある。
近くに住む女性の話によると、この集落の人たちは現在も赤ちゃんが生まれると乳の出と赤ちゃんの健康を祈ってお参りしているとのことで、堂内には新しい立体乳型絵馬が奉納されている(2023年9月取材)。
この像は藤原純友の守り本尊と伝わっているという話が上記資料にある一方、土佐久札城主佐竹氏が譲り受けた一条家ゆかりの仏像との伝承もあるらしい。平成8年の地蔵堂改築の際に修復されたが、特徴から平安時代後期から末期の製作とされた。毎年8月23日の地蔵盆に開帳され、高さ97cmで金箔が施されている。
西福寺は地蔵堂南海山といわれ、古くは立昌寺(曹洞宗)の末寺で、江戸期には天台宗に属して聖護院末寺となり、旧浦全体の祈祷寺だったというが、今は無住。
芝 正一:伊予吉田郷土史話集、吉田町教育委員会、1990、p1〜2
宇和島・吉田旧記刊行会:宇和島・吉田旧記二十八輯 北宇和郡町村誌「奥南村誌」の章、2009、p143
宇和島市公式サイト「新宇和島の自然と文化」 https://www.city.uwajima.ehime.jp/site/sizen-bunka/31ennmei.html
写真:宇和島市提供、奥 起久子撮影(2023/10/23)