三滝神社は三滝山をずうっと登って行った上にある。長い参道の石段入り口に三滝城主であった紀 親安と奥方を祀るお堂「林庭院」があり、道路を挟んだ下方にイチョウの古木がある。樹高35m*、目通り幹周7.9m*、推定樹齢550年**といわれ、県指定天然記念物。西予市教育委員会が立てた現地案内板に、三滝城の大いちょうとある。
多くのチチが垂れていて、第一側枝のものは特に大きく、土地の人々は「乳出のイチョウ」として祈願していたと『愛媛県老樹名木図説』にある。これを煎用すれば母乳が出る卓効ありと伝えられ、削り取られた古い跡が見られると、『わが町わが村自慢の木』や西予市公式サイト「西予市の文化財」に記載されている。
里帰り中に参拝に来ていた地元出身の高齢の女性の話によると、昔は地元の女性はみんな乳の祈願に来ていたそうだ。
ここにはかつて三滝城があり、イチョウの辺りが二の丸だったという。天正時代(1573~92)の中頃、城主の紀 親安(きのちかやす)は長宗我部元親の軍勢と戦って敗れ、32歳でこのイチョウの下で自害したといわれ、親安公の霊木としてもお祀りされている。
*環境庁データベース2000フォローアップ調査より **現地案内板による
秋山英一:愛媛県老樹名木図説、愛媛県老樹名木図説刊行会、1966、p23
牧野和春:わが町わが村自慢の木、牧野出版、1989、p174
愛媛県林材業振興会議:えひめ 森林と木の生活誌、愛媛の森林基金、1991、p126
牧野隆史:愛媛の巨樹80選、愛媛新聞社、2003、p158〜59
西予市公式サイト:西予市の文化財
https://www.city.seiyo.ehime.jp/miryoku/seiyoshibunkazai/bunkazai/ken/kinenbutsu_tennen/4270.html
写真:奥 起久子撮影(2023/10/23)