本谷集落はずれの山林の中にあるイチョウで、樹高18m*、目通り幹周3.4m*、推定樹齢250年*とのことで、町指定天然記念物。この木に願をかけると乳がもらえると伝えられ、「乳イチョウ」と呼ばれていると『柳谷村史』に記載がある。
天然記念物指定時に旧柳谷村が立てたと思われる現地案内板と『ふるさとの文化財』に、このチチの一片を服用すると母乳が出るとの記載があり、また1991年環境庁データベースにはチチを催乳に用いるとあるので、削って用いたのであろう。
大きなチチがたくさん垂れており、根本に小さな祠と石造物がある。周囲に平坦な場所があり、昔は何か寺社などの建物があってイチョウはそこに植えられたのではないかと思われる地形である。
山道に車を停めて細い道を下り、沢を渡って250mほど入った林の奥まった場所で、個人の所有地とのこと。途中に目印や案内看板はなく、案内がないととてもアクセスできないだろう。乳の祈願が伝えられる場所の中には、むかし母親達はよくこのような場所に来たものだと思わせる場所が何カ所かあるが、ここもそのひとつかもしれない。周囲には背の高い樹木が生育して日照が悪くなっており、生育環境の悪化が危ぶまれる。
＊柳谷村史による

柳谷村：柳谷村史、1984、p779〜780
データベース「えひめの記憶」 http://www.i-manabi.jp/system/regionals/regionals/ecode:3/60/view/14501
柳谷村教育委員会：ふるさとの文化財、1998、p15
写真：奥 起久子撮影（2023/10/24）
情報提供：久万高原町教育委員会