標高1042mの楢原山山頂にあるスギ。以前は2本の大杉が並んで立っており、両方とも県指定天然記念物であった。『えひめ 森林と木の生活誌』には、幹に大きなコブや窪みがあり、そこに溜まった水を乳房につけると、母乳の出がよくなり子どもが丈夫に育つということで「子持ち杉」「乳杉」と崇められていたと、『愛媛県老樹名木図説』には、樹皮が母の肌守りとして神聖視されたこと、樹高が24m、幹周はそれぞれ10mと5.2m、樹齢1000年(注:大きい方)と記載されている。
初代は残念ながら枯れてしまい、残存する枯れ株にしめ縄が貼られている。古い写真で見るといかに巨大であったかがわかる。側にある2代目は樹勢もよくこれでも立派な古木。
山頂にはかつて奈良原神社があったが、別宮の大山祇神社に移されて小さな祠と塔だけが残る。ここの経塚からは平安末期の銅宝塔や鏡などが出土して、国の重要文化財に指定されている。
帝国森林会:日本老樹名木天然記念樹、大日本山林会、1962、p69
秋山英一:愛媛県老樹名木図説、愛媛県老樹名木図説刊行会、1966、p11
愛媛県林材業振興会議:えひめ 森林と木の生活誌、愛媛の森林基金、1991、p126
牧野隆史:愛媛の巨樹80選、愛媛新聞社、2003、p68〜69
愛媛県教育委員会文化財保護課公式サイト
https://ehime-c.esnet.ed.jp/bunkazai/kennobunkazai/shiteibunkazai/tennenkinenbutsu/pdf-files/ken/4-3-62komochisugi.pdf
写真:渡辺氏提供(今治市在住:2023/1/4撮影)、初代の写真は愛媛県老樹名木図説より著作権継承者の許可を得て転載