瑞應寺の境内にある大イチョウには多くのチチが垂れていて、昔から「乳出しの霊木」とも呼ばれて信仰されていた。『愛媛県老樹名木図説』『愛媛県史』『えひめ 森林と木の生活誌』『愛媛の巨樹80選』に乳の祈願が行われたという情報が記載されている。現地の教育委員会の案内板には乳の祈願に関する情報はないが、住職のお話によると、乳の祈願は戦前には盛んに行われていた話として伝え聞いているとのこと(2023年10月取材)。
ギンナンを付ける雌木で数本の株立ち、樹高25m*、目通り幹周8. 5m*、推定樹齢800年**と言われており県指定天然記念物。資料の書籍には多くのチチがあると記載されているが、現在チチは僅かにしか見られない。
瑞應寺の山号は仏国山で、釈迦如来像を本尊とする。室町時代の文安5年(1448)に生子山城主松木景村公が建立し、禅門修行の名刹として、現在も多くの雲水が修行をしている格式の高い曹洞宗の寺院。経を納める大きな八角形の回転式経箱を一回転させると、2000巻以上の教典を読んだと同じご利益が得られるという大転輪経蔵は県指定文化財である。
*1991年環境庁データベース **現地案内板による
秋山英一:愛媛県老樹名木図説、愛媛県老樹名木図説刊行会、1966、p23
愛媛県史編さん委員会:愛媛県史 民俗(下)、愛媛県、1984、p298
https://www.i-manabi.jp/system/regionals/regionals/ecode:2/50/view/6602
愛媛県林材業振興会議:えひめ 森林と木の生活誌、愛媛の森林基金、1991、p126
牧野隆史:愛媛の巨樹80選、愛媛新聞社、2003、p44〜45
写真:奥 起久子撮影(2023/10/22)