日本助産師会出版

乳信仰探訪

乳房のような瘤があり乳の祈願が行われた女杉(周囲の伐採前:金子氏提供)
2021年にボランティアの手で周囲の樹の伐採が行われ日照が改善(金子氏提供)
皮を剥がされていたためか、樹皮の色が明らかに違う男杉と女杉(NPO法人石鎚森の学校提供)

石鎚山への古い登山道・石鎚古道の途中にあり、「乳杉」と呼ばれていた。根元近くから二本に分かれ、大きい方が女杉、小さい方が男杉。女杉の幹には乳房のようなコブがあり、その皮を煎じて飲めば乳が出るという伝承があると西条市の立てた現地案内板にある。
『愛媛県老樹名木図説』には、乳の祈願のため参拝者が皮を剥いでいくので周囲に竹柵を作って守っているという話が、『石鎚山 旧跡三十六王子社』には、「大きさ五抱えもあろう杉の巨木の枝の所は乳房の如く大きくゆたかにふくらんでいる。この乳杉の皮をもちかへってどれだけ多くの人々が乳を授かったか、親杉は皮をはがれてしまっている。それを保護するための竹の矢来はいたいたしい」とある。
地元には次のような話が伝わる。850年ほど前、讃岐から祈願に登拝した男がいた。赤子が生まれたが母親の乳が出ないため困って乳の祈願にきたもの。願いが届いて乳が出るようになったので、翌年2月に男はお礼の杉苗を2本携えて石鎚山にお礼参りに来た。 しかし積雪にはばまれて、神のご加護の証の杉は、やっとたどり着いた今宮の地に植えられた。 その杉は大きく育って乳に似たコブが出来、乳杉と呼ばれて多くの人が祈願に訪れるようになったという(今宮協議会より)。
樹高約30m*、目通り幹周4.6m*、推定樹齢800年*といわれ、平成3年(1991)「大杉」という名前で西条市名木50選に選定された。
 *西条市名木指定時の現地案内板より

秋山英一:愛媛県老樹名木図説、愛媛県老樹名木図説刊行会、1966、p20
十亀和作:石鎚山 旧跡三十六王子社、石鎚神社、1972
樹齢800年石鎚「今宮の乳杉」守る・愛媛新聞(愛媛新聞2021年5月17日記事)
石鎚森の学校 http://ishizuchi.net/ishiduchi-kodou/石鎚古道をゆく-乳杉-/
情報提供: NPO法人石鎚森の学校、今宮協議会
写真提供: NPO法人石鎚森の学校、金子真琴氏(西条市在住) 

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