高松市の郊外にある景行天皇皇子の神櫛王(かみくしおう)墓の東隣、牟礼川沿いの一角に、源 義経の家来の佐藤継信(つぐのぶ)の墓がある。「継信さん」と呼ばれて、乳が出るように祈願する場所になっていた。大正時代までは墓地の前にある茶屋で白酒を売っていて、祈願の人はこれをお供えして飲んでいたと言う話が『讃岐の伝説』に記載されている。
佐藤継信は源平合戦の屋島の戦いで義経の身代わりとなって平 教経に討たれたので、義経がここに手厚く葬ったという。また義経が後白河法皇から賜ってヒヨドリ越えの際に乗っていたという太夫黒という馬をここに残して継信の菩提を弔わせたとのことで、馬も同じ墓地に葬られている。
佐藤継信の墓は、牟礼川沿いのここと屋島寺参詣路沿いの2箇所にあるが乳の祈願の話はこちらだけのようだ。
武田 明、北条令子:日本の伝説5 讃岐の伝説、1976、p22
写真:奥 起久子撮影(2023/4/25)