日本助産師会出版

乳信仰探訪

神社入り口の石段の両側に2本のイチョウが立っている
チチが何本も垂れており、ご神木として注連縄が巻かれている

岩部(いわぶ)八幡神社は徳島県との県境に近い山地にある。境内鳥居の左右に2本の大きなイチョウが立っていて、両方とも雌株でギンナンがみのる。幹からは多数のチチが垂れ下がっており、乳を授かるよう祈願する者も多いと、高松市教育委員会の現地案内板や高松市公式サイトに記載がある。児島論文『イチョウ巨樹の乳信仰』には、乳預けもあったという聞き取り情報が記載されている。
県の天然記念物に指定されており、環境庁データベースでは樹高30m、目通り幹周は東側が9m、西側が6m、樹齢は伝承400年とあるが、実際そこまでの太さではなさそうとのこと*。
岩部八幡神社は創始が養老年間(717~724)もしくは天平年間(729~749)と言われている古い神社で、祭神は誉田別命(ホムタワケノミコト:応神天皇)。以前は現在より北の方にあったが、後に現社地の北西山麓に遷座したと伝わっており、その旧跡と考えられる礎石が境内社の素婆倶羅(そばくら)神社前にある。
明徳3年(1392)に四国を治めていた武将細川頼之によって社殿の修築がなされ、イチョウはその頃に植えられたとう伝承があるそうだ。敷地は山の中に広がっていて、幾つもの境内社が点在している。
*人里の巨木たち http://www.hitozato-kyoboku.com/iwabu-hachiman-ichou.htm

児島恭子:イチョウ巨樹の乳信仰―─歴史研究の資料に関する課題─、札幌学院大学人文学会紀要、2018:103;73〜85
高松市公式サイトhttp://www.city.takamatsu.kagawa.jp/kurashi/kosodate/bunka/bunkazai/shiteibunkazai/tennen/icho.html
写真:奥 起久子撮影(2023/4/24)

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