郡里廃寺跡(こおざとはいじあと)に立つイチョウの巨木で、地名が銀杏木であることからわかるように昔から親しまれてきた。数十個ものチチが垂れていて最大のものは3mの長さがある。チチの先を紙で結んで祈願すると乳が出ると伝わっており、『四国老樹名木誌』『郡里町史』『新編美馬郡郷土史』『阿波名木物語』にその記載がある。
樹高9m*、目通り幹周11.9m*、推定樹齢700年**で、市指定天然記念物。樹高は以前32m程あったが、広い平原に立つ木の宿命で、落雷や風にやられて随分低くなっているようだ。雌木で多くのギンナンをつける。
イチョウの傍の祠には「お乳大明神」と書かれた札が掲げられている。1991年環境庁の全国巨樹・巨木林データベースには、イチョウの化身である助けた僧に教えられて母乳が出たという故事があると記載されており、その民話が『郡里町史』『美馬風土拾遺』にある。
郡里廃寺は今から約1300年前の白鳳時代に建てられた徳島県で最も古い寺院跡で、昭和51年(1976)に国の史跡に指定された。発掘調査により、塔、金堂跡などが確認されており、東西100m南北120mの寺域をもった大寺院であったという。
*1991年環境庁データベースより **現地の樹名板による
高知営林局:四国老樹名木誌 上巻、1928、p80
郡里町史編集委員会:郡里町史、1957、p484〜485
美馬郡教育委員会:新編美馬郡郷土史、1957、p38
横山春陽:阿波名木物語、徳島新聞出版部、1960、p157〜158
美馬町史編集委員会:美馬町史、1989、p1320〜1321
美馬市:美馬風土拾遺、2006、p24〜29
写真:奥 起久子撮影(2023/4/24)
資料提供:美馬市教育委員会