剣山へ通じる国道438号を南下していくと、最後の大きな集落が河内集落で、国道に面し民家と並んで河内堂がある。その奥に樹高26m*、目通り幹周6.4m*の立派なイチョウが貞光川を背にして立っており、紅葉の季節には多くの人が訪れる。雄木でチチがたくさんついている。記載された資料はないが、地域の人から乳イチョウと言われて乳の祈願が行われていたとの情報が得られている(つるぎ町教育委員会聞き取り調査:2023年6月)。
河内堂は延宝7年(1704)建立という古いお堂で、観音菩薩が祀られている。修験道の信仰の山でもある剣山の周辺の山間部では、だいたい一小字ごとに独特の形を持ったお堂もしくは庵を持っていて、そこには仏像が安置されて地域住民の信仰の中心となっていたという歴史があり、今も多くのお堂が残っている。集会場も兼ねていたとのことで、河内堂が集落の中心にあるのはそのためであろう。
* 環境庁2000年フォローアップ調査データより
写真と情報:つるぎ町教育委員会提供