掛谷地区の集落の民家の裏に大きなイチョウが立っている。樹の側には小さな鳥居と赤い屋根の小さな祠がある。樹の直下の石を積み重ねた台の上に、乳房を模したように丸い石が2個置かれているが、祈願のために設けられたものとしては他には見られない大変珍しいもの。
お隣の氏子という高齢の男性の話によると、以前乳の祈願が行われたことは知っているが、詳細については伝わっていない。2個の丸い石についても、昔から置かれていた以外のことはわからないという(2023年9月取材)。
『四国老樹名木誌』に、「掛谷のイチョウ」という名前で、樹高14m、地上1mでの幹周4.5m、樹齢400年、樹下に地蔵尊を安置し乳の出が祈願された、という記載がある。名前や状況からはこのイチョウと思われるが、場所が大字生名 東林庵となっている。東林庵というお堂はこの場所からは少し離れたところにあるやはり立派な「生名のイチョウ」のそばのお堂であり、情報が混乱している可能性もある。
掛谷のイチョウは雌木、地上すぐから2つに分れており、チチの数は多くはないが大きいものが垂れている。秋の紅葉時期には他も含めてイチョウ巡りが企画されている。
高知営林局:四国老樹名木誌 上巻、1928、p88(pdfあり)
写真:奥 起久子撮影(2023/9/11)