生名地区の中心、道路のすぐ脇に目立つ大きなイチョウがある。そばにやはり道路に面して東林庵(お庵と呼ぶそうだ)という小堂があり、イチョウはこのお堂の境内にあったものという。
『勝浦町前史』に、この庵には地蔵仏が安置されており、祈願すると母乳の出に霊験があること、イチョウは切れば祟りがあると言われて道路拡張時に道路の方が迂回したとある( p155 )。違うページには、東林庵にある切れば祟りがあるとして知られる境内のイチョウは、母乳に霊験あらたかとして知られると書かれている( p605 )。『勝浦町前史』以外にこのイチョウに乳の祈願が行われたという情報はなかった。
イチョウは雌木で、チチは小さいが切り取られたような跡がある。紅葉の季節にはツアーが企画されている。
東林庵のご本尊は十一面観音で、公会堂ができるまでは地域の集会場の役割もあったという。『勝浦町前史』には4間四方ほどの大きさの写真があるが、建て替えられて現在のお堂は小さい。また中にお祀りされているのは弘法大師ゆかりの薬師如来であると、現地に掲げられた「東林庵薬師如来縁起」にある。堂中は大変綺麗に清掃され、祈願のための折り鶴が奉納されており、薬師如来・弘法大師・不動明王が祀られている。
勝浦町史編集委員会:勝浦町前史、勝浦町、1977、p155、p605
写真:奥 起久子(2023/9/11撮影)