JR大杉駅の対岸の山を登って行ったところの民家に、イチョウの巨木があった。根本から清水が湧いてでており、乳が出ると言われて祈願されたという話が、『四国老樹名木誌』『日本老樹名木天然記念樹』『樹木図鑑』にある。これらの資料によるとチチが多いのが特徴で、大小数十本が垂れており、樹高20m、胸高幹周5.4m、樹齢650年だったという。
『大豊の史蹟と文化財』には、雄木でチチの発達が顕著、一番大きいものは根元周囲1.3m、長さ2.5mあること、10cm以上のものが120本以上あること、先端が切られたものもあるが、そこから新たに4〜5cm以上も伸びている、と記載されている。
10年ほど前に根もとから1mほどのところで折れて倒れてしまったとのことだが、根は残存しており、蘖(ひこばえ)が大きく育って斜面の下の道路からもよく見える程度になっている。また近隣の平石の乳イチョウ、吉延の乳銀杏もそうだが、このイチョウの側にもナンテンが植えられている*。
所有者は乳の祈願が行われていた話は知っているが、話として聞いているだけとのこと。清水は見当たらなかった(2023年9月)。
* 余った乳を捨てる場所は、ナンテン・クワ・イチョウの木の根もとと決まっていること、また一時お預けします、ないようになったら返してくださいと唱える、という話が『愛媛県史 民俗 下』にある。https://www.i-manabi.jp/system/regionals/regionals/ecode:2/50/view/6602
高知営林局:四国老樹名木誌 上巻、1928、p87
帝国森林会:日本老樹名木天然記念樹、大日本山林会、1962、p334
上原敬二:樹木図鑑 第2巻イチョウ科、加島書店、1970、p175
大豊町文化財保護審議会:大豊の史蹟と文化財 4回改訂版、大豊町教育委員会、2005、p62
写真:奥 起久子撮影(2023/9/11)
資料と写真提供:大豊町教育委員会