京間地区の仁淀川堤防上にある。『大日本老樹名木誌』『日本老樹名木天然記念樹』『四国老樹名木誌』『樹木図説』といった多くの資料に、名称が乳公孫樹・乳イテフ、「信仰が厚く、祈れば必ず乳が出るようになり、また百日咳も治す」とある。地元の老婦人への取材では、妊娠したらイチョウにお願いするとお乳がよ〜う(よく)でるようになると言われていたとのこと(2023年9月現地在住助産師さんより)。現地案内板(公的なものと思われるが、設置者名不明)には乳の祈願に関する記載はない。
イチョウは幹が6本以上あってそれぞれ独立した木のように見えるが、堤防の嵩上げのため約10mの土盛りを行ったもので、本来は1本の木。土佐市指定天然記念物で、案内板によると樹高は21m、樹齢不明、『土佐の古木』*には、樹齢は500〜800年、樹高24mとある。嵩上げ前のデータである『四国老樹名木誌』では、胸高幹周7.8m、樹齢1500年とある。雌木でチチはそれほど多くなく、また先端が切り取られたものが見られる。
資料よると、平城天皇の第3皇子高間親王が、大同年間(806〜810)にこの地域にある医王山清滝寺で修業、その時に男山八幡宮を勧請し、新居の浦から河舟に乗った時にはこのイチョウの下に舟を繋いだそうだ。
堤防上にはこの木だけが聳え立っている。綺麗に掃除されており、樹下にはたくさん椅子が並べられて人々が集うことができるようになっている。
*武市伸幸:土佐の古木、南の風社、1997
本多静六:大日本老樹名木誌、大日本山林会、1913、p133
高知営林局:四国老樹名木誌 上巻、1928、p82
帝国森林会:日本老樹名木天然記念樹、大日本山林会、1962、p310
上原敬二:樹木図説第2巻イチョウ科、加島書店、1970、p175
写真:坪井志津氏提供(高知市在住、助産師、IBCLC、2023/9/10撮影)
取材協力:森木由美子氏(土佐市在住、助産師、IBCLC)