長者地区の十王堂境内に立っている。樹高約15m*、目通り幹周11m*、伝承では樹齢1200年*で、県指定天然記念物。『土佐の名木』に「乳を授けてくれるということで、赤い布が奉納されている」と、1991年環境庁の全国巨樹巨林データベースに「信仰あり、乳を授ける」との記載がある。
地元の年配の人は乳の祈願が行われたという話をご存じで、「おはたし」と言われるお礼のお参りでは、紅白の細長い布を結んだとのこと。現在も格子には紅白の細い布が結び付けられている(2023年9月取材)。
*『土佐の名木』による
江戸時代にはイチョウは3本あって樹高40mを誇っていた。文化13年(1816)に長者村庄屋 高橋嘉太平が幹の1本を伐り、十王堂の改築用材とした。大正2年(1913)には火災で地上9mより上の部分を焼失、2年後の同4年(1915)には、台風により1幹が地上6mで折れた。ようやく樹勢回復したものの、昭和45年(1970)の台風で樹冠部がまた大きく損傷したという受難のイチョウ。
十王堂のご本尊は十一面観音で、厨子の中に祀られている。
全国林業改良普及協会:土佐の名木、高知県、1971、p26〜27
写真:奥 起久子撮影(2023/9/9)