樹高 28m*、目通り幹周8.4m*、推定樹齢600年*の大きなイチョウで、市指定天然記念物。『中津江村誌』に「育児の呪(まじない):乳が不足する産婦は、二又のお薬師様に乳もらいに参った。銀杏の大きな枝に垂れている乳房状の皮を削り、煎じて飲むと乳が出るようになるとした。枝が折れてからは乳房状のものを薬師堂に入れてある。福岡県からも乳もらいに参る女性があり、名前を書いた幟を奉納してある」と記載されている。
イチョウの側にはお堂があって、2体のお地蔵さまがお祀りされており、向かって右が薬師如来。『中津江村誌』にある折れたチチも奉納されている。
周辺には古い石造物が集められており、一番古いものは応永17年(1410)の年号のある五輪塔とのこと。
このイチョウで懸念されるのは、まず周囲を背の高い樹木に囲まれ、苔がびっしり幹を覆い、蔓性植物が絡んでいて、日照も悪くなっているという生育環境。
またこの周辺は昔お城があって最近まで民家に大友宗麟からの手紙が保存されていたという古い集落だが、現在数件の民家が残るのみ。イチョウやお堂へは鹿や猪よけのフェンスを開けて入っていかなくてはならない。ここは集落が共同で管理している私有地だそうだが、今後どうなっていくのかも懸念される。
*中津江村教育委員会の現地案内板による
中津江村:中津江村誌、1989、p598
写真:奥 起久子撮影(2023/11/7)
取材協力:日田市役所中津江振興局