七瀬川を見下ろす山の中にある潮元神社の妙見さんは、かつて乳授けの神様といわれ、辺鄙な場所にもかかわらず、遠くからも乳を求めた多くの女性のお参りで賑わい、香煙が絶えることがなかったという話が『ななせの里いわれと伝説』にある。
すぐ近くにある今宮神社の案内板に、「神社一帯には、母乳の少ない人々、子供に恵まれない人達が訪れた妙見神社もあります。」との記載がある。この辺りには塩分を含んだ湧水があったそうで、数十年前までは「塩水が出る場所」として地元の方が水を汲みにくるなどしていたとのこと(『ななせの里いわれと伝説』)。神社名や地名もこの湧水に由来しているらしい。
神社の本殿は朽ちて取り壊され、土台や瓦が残っているほか、「妙見社潮元神社」と書かれた鳥居、参道の石段、享保9年(1724)と彫られた石灯籠などが残されている。今宮神社の前の道路を、橋を渡ってすぐ右折して山に入っていくのだが、現在ほとんど人が通らないため道が崩壊しそうな箇所があり、一人で行くのは危険な場所になっている。
『郷土史野津原』によると、潮元神社のご祭神は天御中主命・高産神・上産神、以前は原村に祀られていたが暴風雨によって神霊がこの場所・潮元に漂着し、ここ祀られるようになったとある。
野津原町 編:郷土史野津原、1980、p285
河野博匡:ななせの里いわれと伝説、1990、p37-38
原村郷土史編纂委員会:原村小史 第十章/第三節、1993
写真:奥 起久子撮影(2023/11/6)
情報提供:大分市役所野津原支所